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冬は食中毒の発生が多い季節。食中毒というと気温や湿度が高い夏に発生しそうなイメージだが、じつは冬の方が発生数は多い。特に注意が必要なのがノロウイルスだ。ノロウイルスによる食中毒は約7割が冬に発生しているという。また、食品を介した食中毒だけでなく、人から人へ接触感染する危険性があるのも厄介だ。
ここでは、ノロウイルスの予防方法を改めて紹介。飲食業界は繁忙期まっただ中だが、今一度、食中毒に対する予防意識を高め、安全な店舗運営を心掛けてほしい。
ノロウイルスはウイルス性胃腸炎を引き起こす感染力の高いウイルスだ。厚生労働省のデータによると、ノロウイルスによる食中毒は一年を通じて発生が見られるが、例年11月から発生件数が増加し、12月から翌年の3月かけてピークを迎える。気温が下がり空気が乾燥する冬は、ノロウイルスにとって過ごしやすい環境であるということに加え、人の免疫力が低下しやすいことも理由として挙げられるだろう。
ノロウイルスの感染経路としては主に「食品」からと「人」からの2種類。
■食品からの感染
・ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を、生のまま、またはあまり加熱せずに食べた場合
・ノロウイルスに感染している食品取扱者が触れたり調理した食品を食べた場合
■人からの感染
・ノロウイルスに感染している人の便や吐しゃ物を処理する際に、飛び散ったノロウイルスを吸い込んでしまったり、処理した人の手指を介してウイルスが口から入ってしまった場合
飲食店としてノロウイルスによる食中毒をどのように防ぐべきか。厚生労働省のホームページから予防方法を抜粋して紹介しよう。
■手洗いを忘れない
調理を行う前はもちろん、食器やテーブルなどに触れる前にも手洗いをするようにしたい。石鹸を使ったしっかりとした手洗いは、手に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な手段。手指用の消毒用エタノールだけでは、手洗いほどウイルス除去の効果は見込めないので注意が必要。
■調理道具は次亜塩素酸ナトリウムでの消毒や加熱消毒を
一般的な感染症対策には消毒用エタノールや逆性石鹸が使われるが、ノロウイルスを除去する場合には次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒や加熱消毒が有効だ。特に、よく使用するまな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は85度以上の熱湯で1分以上加熱消毒しよう。
■ノロウイルス汚染の恐れがある食品は十分に加熱
一般的にノロウイルスは熱に弱いため、加熱調理は有効手段の一つ。ノロウイルス汚染の恐れがあるカキなどの二枚貝や野菜などの食材は、中心部を85~90度で90秒以上加熱することが望まれる。
■スタッフの健康状態を把握しておく
感染者の吐しゃ物に含まれたウイルスが、人を介して食品を汚染し、その結果ノロウイルスによる食中毒を引き起こすという事例も多く見られる。食品への二次汚染を防止するためにスタッフの健康状態を日頃から把握するようにし、下痢や嘔吐、風邪のような症状がある場合には、食品を扱わせないのはもちろん、出勤を停止し、速やかに病院を受診させよう。
食中毒が起きてしまった場合の対策として最も多い回答が、「保険(生産物賠償責任保険など)に加入している」だ。47.8%と約半数の店舗が保険に加入していることになる。
もし食中毒を起こしてしまうと、被害を受けたお客様に損害賠償金を支払ったり、営業停止処分を受けることもある。どこまで補償が適用されるかは保険によって様々だが、あらかじめ保険に入って備えておくと安心だ。
次に多いのが、「発生時の初期対応マニュアルを作成し、従業員に教育を行っている」という回答。いざ食中毒が発生すると、スタッフも混乱してしまうもの。マニュアルを準備して、普段から“もしも”のときに備えておいた方がよさそうだ。
ノロウイルスは健康な人なら数日で回復するが、子どもやお年寄りが感染すると重症化してしまったり、吐しゃ物を気道に詰まらせて死亡するケースもある。今一度、自店舗の対策は万全か確認し、しっかりと予防に努めたいものだ。